超高齢化社会の備え

はじめに:超高齢社会が直面する「ダブルケア世代」
2025年、団塊世代(1947〜1949年生まれ)がすべて75歳以上となり、「後期高齢者」の比率が急増しました。この影響で、現在50代の子ども世代は、仕事・家庭を支えながら、80代の親の介護という重大な責任を担うことが当たり前の時代に突入しています。特に55〜59歳の世代は「ダブルケア世代」と呼ばれ、親の介護に加え、子どもの進学・就職支援や、自身の老後準備にも直面する「三重苦」の状況にあります。
1.介護の現実:50代子ども世代が直面する課題
①介護離職のリスク
介護と仕事の両立は非常に困難です。厚生労働省の2024年データによれば、年間約9万人が「介護離職」しており、その多くが50代。特に企業の中核人材であるこの世代の離職は、個人の収入・老後資金だけでなく、企業活動にも大きな打撃を与えています。
②親の「多重疾患」と認知症
80代は、心疾患、糖尿病、関節リウマチ、がんなど複数の慢性疾患を抱えているケースが多く、介護には医療的な知識も必要です。さらに、認知症の発症率も高くなり、本人の意思確認や金銭管理、徘徊対策など複雑な対応が求められます。
③「遠距離介護」と「老老介護」
都市圏に住む50代が地方の実家にいる親を支援する「遠距離介護」は、精神的・経済的負担が大きくなっています。一方、80代の親の中には、夫婦間で介護し合う「老老介護」も増えており、子ども世代としての介入タイミングが難しいのも実情です。
2.介護サービス・制度の変化と現状
①介護保険制度の変化(2024年改正)
2024年の制度改正により、要介護1・2の一部サービスが市町村事業へと移管され、地域差が生まれています。自治体によっては、サービスの質や量が低下するなど、地域間格差が拡大中です。
②在宅介護と施設介護の選択肢
在宅介護を選ぶ家庭は依然多いものの、ケアマネジャー不足や訪問看護師の人手不足により、十分な支援が受けられないケースも増加。一方で、特別養護老人ホームや有料老人ホームは待機者が多く、費用負担も重くなっています。特に都市部では「施設に入れたくても入れない」という現象が顕著です。
1人で頑張らない

3.50代子ども世代に求められる対応・工夫
①仕事と介護の両立支援
企業の中には、リモートワークやフレックスタイム制度を導入し、社員の介護負担を軽減する動きも出てきています。また、国は「仕事と介護の両立支援制度」を強化し、介護休業や介護休暇の取得促進を推進しています。
しかし、制度の存在は知っていても、実際には「職場に迷惑がかかる」「評価が下がる」などの理由で、利用が進まないケースも多く、意識改革が課題です。
②デジタルツールの活用
見守りカメラ、GPS付き端末、服薬管理アプリ、オンライン診療など、介護をサポートするデジタルツールが広まりつつあります。特に、遠距離介護を行う家族にとっては、テクノロジーの活用が日常的な選択肢になっています。
③介護者自身のケア
50代は自分自身の体力・健康も衰え始める年代。親の介護に集中するあまり、自分の健康を損ない「介護うつ」や「燃え尽き症候群」に陥ることも少なくありません。地域の介護者支援グループやカウンセリング、介護者カフェなど、気軽に話せる場の活用が求められています。
4.親と子の間で大切な「事前準備と話し合い」
①「人生会議(ACP)」のすすめ
延命治療や終末期医療、介護方針について、親と子が元気なうちに話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」が注目されています。突然の入院や認知症発症に備え、親の希望を確認し、記録に残しておくことが重要です。
②お金の準備
介護には平均500万円〜1000万円がかかると言われており、資金の準備や親の年金・資産管理(成年後見制度の活用含む)は早めの計画がカギとなります。
5.今後の展望とまとめ
2025年の日本は、ますます「在宅で、地域で、高齢者を支える」流れが強まっています。介護は、もはや一部の人だけの問題ではなく、誰もが当事者となる社会課題です。
50代の子ども世代にとって、親の介護は決して「負担」だけではありません。親と過ごす貴重な時間、家族の絆を再確認する機会ともなり得ます。ただし、そのためには、情報収集と制度の活用、そして自分自身の人生も大切にする「バランス感覚」が何よりも必要です。
最後に
介護は一人で抱えるものではありません。社会資源、テクノロジー、家族の協力、地域のつながりを上手に活用しながら、「自分らしく」親の老後と向き合うことが、50代世代にとっての大きなテーマとなっていくでしょう。