会社を辞めたいほど、仕事が嫌なわけじゃない。

会社を辞めたいほど、仕事が嫌なわけじゃない。

毎月給料は入ってくるし、長く勤めてきた会社なら、それなりの立場もある。

職場にも慣れている。

今さら転職するのも大変そうだし、家族や住宅ローンのことを考えれば、簡単に会社を辞めるわけにもいかない。

それなのに50代になってから、ときどきこんなことを考えるようになりませんか。

「俺、このまま定年まで働くのかな」

僕も50代になってから、仕事や人生について考えることが増えました。

若い頃は、目の前の仕事で精一杯でした。

30代、40代は、会社でどう評価されるか、給料をどう上げるか、家族をどう支えていくか。

定年なんて、ずっと先の話でした。

ところが50代になると、その「ずっと先」だったものが急に近づいてきます。

60歳まであと何年。
65歳まであと何年。

数字にすると、思っていた以上に短い。

すると、

「定年後、何をするんだろう」

「今の収入がなくなったらどうなるんだろう」

「再雇用になったら、仕事や給料はどうなるんだろう」

そんなことが、急に現実の問題になってきます。
 

「辞めたい」ではなく、「このままでいいのか」

50代の仕事の悩みは、20代や30代とは少し違うと思います。

「会社が嫌だから辞めたい」

それだけではありません。

むしろ僕の周りを見ても、

「別に今の会社が嫌なわけではない」

という人は少なくありません。

でも、その後にこう続きます。

「ただ、このままでいいのかな……」

僕は、この「ただ」が50代の本音なのではないかと思っています。

会社を辞めるほどではない。

でも、定年まで会社だけに頼っていていいのだろうか。

自分には会社の外でも通用するものがあるのだろうか。

もし会社を離れたら、自分には何が残るのだろう。

50代になると、そんな不安が少しずつ出てきます。

僕自身は50歳で大手企業を退職しました。

そして独立しました。

会社員だった頃は、会社を辞めればもっと自由に生きられると思っていた部分もありました。

ところが現実は、そんなに甘くありませんでした。

思うように仕事が取れない。

収入が入ってこない。

貯金がどんどん減っていく。

「来月どうしよう」

そんなことまで考えるようになりました。

会社員時代には毎月決まった日に給料が振り込まれていました。

当時はそれが当たり前だと思っていました。

でも、自分で仕事を始めて初めて分かりました。

毎月給料が入るというのは、本当にありがたいことです。

だから僕は、50代の人に簡単に、

「会社を辞めて起業しましょう」

なんて言えません。

むしろ、勢いだけで辞めない方がいいと思っています。

僕自身が、その怖さを経験したからです。

でも――。

だからといって、

「定年まで何も考えず、今の会社にいれば安心」

とも思っていません。

ここが難しいところです。

会社を辞めるか、残るか。その二択しかないと思っていた

僕自身、以前はどこかで、

会社員を続けるのか。

それとも会社を辞めて自分でやるのか。

その二つしかないように考えていました。

でも、58歳になった今は少し違います。

人生は、そんなに白か黒かではない。

会社を続けながら、別の可能性を探してもいい。

転職という道もある。

小さく副業を始めてもいい。

これまでの経験を誰かの役に立てる方法を考えてもいい。

AIのような新しいものを学んで、自分にできることを増やしてもいい。

つまり、

会社を辞めなくても、「会社しかない人生」から少しずつ離れることはできる。

僕は今、これが50代にとって、とても大事なことだと思っています。

いきなり人生を変える必要はない

50代には、50代の事情があります。

家族がいる。

住宅ローンが残っている。

親の介護が始まるかもしれない。

自分自身の健康だって、若い頃と同じではありません。

老後のお金も気になります。

だから、

「人生を変えたいなら、すぐ行動しよう」

と言われても、そんな簡単な話ではありません。

僕は、大きく動かなくてもいいと思っています。

まずは、自分がこれまで何をしてきたのかを整理してみる。

会社では当たり前にやっている仕事でも、外から見れば立派な経験かもしれません。

営業を30年やってきた。

部下を育ててきた。

クレーム対応をしてきた。

現場をまとめてきた。

数字を管理してきた。

お客様との関係を築いてきた。

本人にとっては「普通のこと」でも、それを必要としている人がいる可能性があります。

50代には、20代にはないものがあります。

それは、これまで積み重ねてきた経験です。

ただ、その経験は会社の中にいると、意外と自分では気づきません。

名刺から会社名がなくなったとき、

「自分には何ができるんだろう」

と初めて考える人もいます。

僕もそうでした。

だからこそ、会社にいるうちに一度考えてみてほしいのです。

「会社員」という肩書を外したとき、自分には何が残るだろう。

50代からは「選択肢」を増やしておく

会社を辞める必要はありません。

今の会社で定年まで働くのも、もちろん一つの生き方です。

でも、それが「自分で選んだ道」なのか、

「ほかに何もないから、その道しかなかった」のか。

この二つは、同じように見えても少し違う気がします。

会社を続ける。

転職する。

副業を始める。

自分で小さな仕事を作る。

定年後は働く時間を減らす。

好きなことを仕事の一部にする。

どれが正解ということではありません。

大切なのは、自分で選べること。

僕は50歳で会社を辞め、その後うまくいかず、選択肢がなくなっていく怖さも経験しました。

だから58歳になった今、強く感じています。

50代からの人生は、

道がひとつしかないと思うと苦しくなる。

でも、

「こっちもある」
「こんな生き方もある」

そう思えるだけで、少し景色が変わります。

定年まで、あと何年でしょうか。

その日まで何もせず待つ必要はありません。

かといって、明日会社を辞める必要もありません。

今の生活を大切にしながら、会社の外にも小さな道を作ってみる。

本を読むことでもいい。

AIを使ってみることでもいい。

自分の経験を書き出してみることでもいい。

会社以外の人と話してみることでもいい。

そんな小さなことからでも、これからの人生は考えられます。

50代は、若い頃のように何でもやり直せる年代ではないかもしれません。

だからこそ、勢いだけではなく、現実を見ながら準備する。

僕は、それでいいと思っています。

会社を辞めたいわけじゃない。

でも、このまま定年まで働くだけなのも、なんとなく不安。

もし今、そんな気持ちがあるのなら、

それは「会社を辞めるべき」というサインではなく、

これからの人生を一度、自分で考えてみる時期に来たということなのかもしれません。

58歳の僕も、まだその途中です。