会社では当たり前だった経験が、誰かの役に立つかもしれない。
会社を離れて初めて気づく、自分の経験の価値
「自分には何ができるんだろう?」
50代になって、これからの仕事や収入について考えたとき、こんなことを思ったことはありませんか。
「会社以外で、自分に何ができるんだろう?」
「特別な資格もないし、人に教えられるようなこともない」
「副業や起業に興味はあるけれど、何をすればいいのか分からない」
実は、こうした悩みは珍しいことではないと思います。
20年、30年と会社で働いてきたのに、いざ自分の強みを考えると、なかなか思い浮かばない。
ちょっと不思議ですよね。
これまで毎日仕事をして、いろいろな問題に対応してきたはずなのに、自分には何もないような気がしてしまう。
でも、それには理由があるのかもしれません。
会社の中では、自分ができることが「当たり前」になっているからです。
会社の中では、できて当たり前だったこと
例えば、長年営業の仕事をしてきた人。
お客様の話を聞き、要望を整理し、相手に合った提案をする。
本人にとっては、毎日やってきた普通の仕事かもしれません。
でも、相手の話を丁寧に聞き、何を求めているのか理解することは、誰にでも簡単にできることではありません。
事務の仕事をしてきた人なら、書類を整理したり、仕事の段取りを考えたり、ミスを防ぐための工夫をしてきたでしょう。
製造現場で働いてきた人なら、品質を守ることや、安全に作業すること、トラブルへの対応など、長年の経験があるはずです。
管理職だった人も、部下の相談に乗ったり、意見の違う人たちをまとめたり、難しい判断をしてきたかもしれません。
どれも、会社の中では特別なことではなかったでしょう。
でも、会社の外から見れば、役に立つ場面があるかもしれません。
ただし、ここで一つ気をつけたいことがあります。
経験があることと、その経験がすぐに収入になることは、別の話です。
私は、ここを簡単に考えてはいけないと思っています。
なぜなら、自分自身がその難しさを経験したからです。
50歳で会社を辞めた私の現実
私は50歳で大手企業を退職しました。
その後、独立に挑戦しましたが、思うようにはいきませんでした。
会社員として働いてきた経験もある。
仕事の進め方も、それなりに分かっているつもりでした。
でも、会社を離れてみると、想像していた世界とは違っていました。
会社員の頃は、会社の名前があり、仕事をする環境がありました。
取引先との関係も、会社の信用があってこそ成り立っていた部分があったと思います。
ところが、独立すると、その看板はありません。
自分で仕事を見つけなければならない。
自分のサービスを必要としてくれる人を探さなければならない。
そして、実際にお金を払ってもらわなければ、収入にはなりません。
頭では分かっていたつもりでした。
でも、実際にやってみると、これが本当に難しかったんです。
思うように仕事が増えず、収入がなくなり、とうとう貯金も底をつきました。
あの頃は、毎日の生活をどうするかで精いっぱいでした。
会社員時代には当たり前だった毎月の給料が、どれほどありがたいものだったのか。
身をもって知りました。
そして、もう一つ考えさせられたことがあります。
それは、会社で仕事ができることと、会社の外で仕事をつくれることは違うということです。
「何もない」のではなく、見つけ方が分からない
独立で苦労したからといって、それまでの会社員経験が無駄だったとは思いません。
むしろ、長年働いてきたからこそ身についたことも、たくさんあるはずです。
ただ、それを会社の外でどう生かすのか。
そこが分からなかったんです。
例えば、営業経験があるからといって、すぐに営業コンサルタントになれるわけではありません。
人を管理した経験があるからといって、すぐに誰かがお金を払って相談してくれるわけでもありません。
相手が何に困っているのか。
自分の経験のどの部分が役に立つのか。
それを、相手に伝わる形にする必要があります。
これは、会社員として長く働いてきた人ほど、意外と難しいことなのかもしれません。
会社では、自分の役割がある程度決まっています。
でも、会社の外では、自分で役割を見つけなければならないこともあります。
だから、50代で「自分には何もない」と感じている人も、本当に何もないとは限りません。
ただ、自分の経験を会社の外から見直す機会が、これまで少なかっただけなのかもしれません。
50代から、自分の経験をどう生かしていくか
まずは「できること」を小さく分けてみる
では、これまでの経験をどう整理すればいいのでしょうか。
私は、いきなり「自分の強みは何か」と考えなくてもいいと思っています。
強みという言葉は、少し大げさに感じませんか。
何か人より優れたものを見つけなければいけない。
そんな気持ちになってしまいます。
でも、最初はもっと身近なことでいいと思うんです。
例えば、これまでの仕事で人からよく頼まれたこと。
同僚や後輩に、何度も説明してきたこと。
面倒だったけれど、自分なりに工夫してきたこと。
人から感謝されたこと。
そういうことを、一つずつ思い出してみる。
「新人に仕事を教えることが多かった」
「お客様の苦情を聞く役割だった」
「パソコンが苦手な同僚によく頼られた」
「仕事の段取りを考えるのが得意だった」
どれも、本人にとっては当たり前のことかもしれません。
でも、そこには長年の経験が隠れている可能性があります。
もちろん、書き出したものがすべて仕事になるわけではありません。
ただ、自分が何をしてきたのかを整理するだけでも、見え方は少し変わると思います。
自分ができることより、相手が困っていること
もう一つ、私が大事だと思うのは、相手の立場から考えることです。
自分には何ができるのか。
それも大切ですが、それだけでは仕事につながらないことがあります。
例えば、資料作成が得意な人がいたとします。
でも、「私は資料を作れます」と言うだけでは、なかなか仕事にはならないかもしれません。
一方で、資料づくりに時間を取られて困っている小さな会社があったらどうでしょう。
その会社が必要としているのは、立派な資格よりも、実際に資料を整えてくれる人かもしれません。
もちろん、これは一つの例です。
実際に需要があるかどうか、どのくらいの金額で依頼してもらえるのかは、調べてみなければ分かりません。
それでも、自分の経験を考えるときに、
「私は何ができるだろう」
だけではなく、
「誰が、どんなことで困っているだろう」
と考えてみる。
この視点は、会社以外の収入を考えるうえで役に立つと思います。
最初から起業を目指さなくてもいい
50代で新しい収入を考えるというと、副業や起業という言葉が出てきます。
でも、私は誰もが起業を目指す必要はないと思っています。
今の会社で働き続けながら、別の収入の可能性を探す人もいるでしょう。
転職によって、これまでの経験を違う職場で生かす方法もあります。
資格を取ったり、新しい技術を学んだりすることが、次の仕事につながる人もいるかもしれません。
大切なのは、自分の生活や事情に合った方法を考えることです。
50代には、簡単に仕事を辞められない理由があります。
家族の生活、住宅ローン、親の介護、自分自身の健康。
そうした現実を無視して、「思い切って挑戦すればいい」とは言えません。
私自身、独立に失敗し、収入がなくなる怖さを経験しました。
だからこそ、できるだけ小さく試すことが大事だと思っています。
例えば、興味のある仕事について調べてみる。
実際にその仕事をしている人の話を聞いてみる。
副業が認められているなら、無理のない範囲で小さな仕事を試してみる。
最初から大きな収入を目指さなくてもいいと思います。
まずは、自分の経験が会社の外でも役に立つのか、確かめてみる。
その結果、思っていたほど需要がなかったと分かることもあるでしょう。
でも、それも大切な発見です。
大きなお金を使ってから気づくより、ずっといいと思います。
50代の経験は、これから使うこともできる
私も58歳になりました。
50歳で会社を辞めてから、思い描いていたとおりに進んだことばかりではありません。
むしろ、失敗したことや、後悔したことの方が印象に残っています。
50代で就職活動をしたときには、年齢の壁を感じることもありました。
長年働いてきた経験があっても、それだけで仕事が見つかるわけではありません。
でも、だからといって、これまでの経験に意味がなかったとは思いたくありません。
会社で働いてきた経験。
人との関わりの中で学んだこと。
失敗して初めて分かったこと。
そうしたものも含めて、今の自分があるのだと思います。
ただし、経験があるだけで何とかなるほど、世の中は甘くありません。
その経験を誰に、どう役立てられるのか。
そして、実際に必要としてくれる人がいるのか。
そこまで考えて、少しずつ確かめていく必要があります。
私が今、50代・60代の人生再起について考えているのも、自分自身が会社を離れて苦労したからです。
会社に頼らず収入を得ることは、決して簡単ではありません。
でも、会社の外にも自分の可能性があるかもしれない。
そう考えることまで、諦める必要はないと思っています。
もし今、「自分には何もない」と感じているなら、これまでの仕事を少し振り返ってみてほしいんです。
人から頼まれたこと。
誰かの役に立てたこと。
苦労しながら覚えたこと。
その中に、これから生かせる何かがあるかもしれません。
すぐに収入になるかどうかは、まだ分かりません。
それでも、58歳の私は思います。
50代まで積み重ねてきた経験は、過去のものとしてしまっておくには、少しもったいない。
これからの人生で、もう一度使えるものがないか。
私も、そんなことを考え続けています。